浅井の娘2 竹生島と茶々1

  • 2020.07.01 Wednesday
  • 18:04

 

 竹生島宝厳寺の唐門・観音堂の保存修理が終了し、建築当時の華麗な姿が蘇りました。工事の経過には問題があったようですが、蘇った建物達には罪はありません。

 

 竹生島には、桃山期の美の粋を集めた建物群があることで知られています。今回の修理で蘇った宝厳寺唐門・観音堂と渡廊・都久夫須麻神社本殿です。これらの建物群は、豊臣秀吉の伏見城の建物を、秀吉を祀る豊国廟に移築し、さらに豊臣秀頼の手により竹生島に移築されたとされていました。しかし、今回の保存修理を通して、これらの建造物群が、秀吉の大阪城にあった「極楽橋」を豊国廟に移築し、これを竹生島に移築した可能性が高いことが判明した、と報じられました。大阪城の極楽橋を移築した可能性については、2017年に竹生島奉賛会が刊行した『竹生島 琵琶湖に浮かぶ神の島』の中で、既に、神戸女子大学の木村展子さんが、その可能性をしていましたが、この指摘が証明されたことになったわけです。

 

01都久夫須麻神社.JPG
都久夫須麻神社

 

 極楽橋移築説の事の発端は、都久夫須麻神社本殿の建物です。この建物は、永禄十年(1567)に浅井長政らの手により建立された、弁天堂がベースになっています。永禄10年といえば、信長の妹のお市はすでに長政に嫁いでおり、2年後の永禄十二年に茶々(淀殿)が生れています。

 

 この時建築された弁天堂は、華麗な彫刻が施された美麗な建物でした。現在の建物は、中心の3間×3間の身舎(もや)の周りに、正面5間、側面4間の廂(ひさし)を巡らせています。昭和十一年(1936)に行われた解体修理の結果、この建物には様々な矛盾があることが判明しました。そのもっとも大きな矛盾は、身舎と廂の柱筋が悉く通らないのです。これは、身舎と廂がそれぞれ別の建物であることを示しています。さらに、身舎の柱には角柱を用い、廂には丸柱を使っています。これは通常の神社建築ではありえない柱の使い方です。柱には「格」があります。原則として、丸柱は格が高く、より神仏に近い空間に使われます。対して角柱は「格」が低く、神仏を参拝するために建物に参入する人間の空間に使われます。つまり、身舎部分は世俗的な建物であり、反対に廂部分が神仏のための聖的建物であることを示しています。

 

02都久夫須麻神社本殿平面.jpg
都久夫須麻神社本殿平面
03都久夫須麻神社本殿新旧の関係(赤が慶長7年・緑が永禄10年).jpg
都久夫須麻神社本殿新旧の関係
(赤が慶長7年・緑が永禄10年)

 

 これらの矛盾は、身舎と廂が別々の建物である、と考えれば解消します。実は、廂部分は永禄十年に浅井長政らにより建築された弁天堂で、身舎部分が、慶長七年(1602)に何処からか移築された建物なのです。そしてこの移築された建物が、大阪城の極楽橋の一部と考えられるようになったのです。橋に建物が乗っている?変な感じがしますが、大阪城の古図を見ると唐破風屋根が懸かる橋の中央に、此れも唐破風付きの楼が乗っています。この楼が都久夫須麻神社本殿の身舎部分と推定されるのです。

 

 そう考えると、本殿建物を見た時の違和感も解消されます。それは、本殿身舎に懸かる、唐破風付きの入母屋屋根と、廂部分に懸かる裳階屋根(もこしやね)の間が、とってつけたような縦板で覆われていることです。ここにも彫刻が施されればもっと格好の良い建物なのに、変な感じがしますが、二つの建物を合体させたと考えれば納得できます。

 

04都久夫須麻神社本殿.JPG
都久夫須麻神社本殿

 

 さらに、本殿の裏にも唐破風がついています。唐破風は見る人に建物の豪華さをアピールするために付ける飾りですから、普通は正面だけに付けます。まして、都久夫須麻神社本殿の後ろは崖で、通常、人が眺めることはありません。そうすると、此の身舎部分の建物は建物の前後から人に見られることを前提とした建物ということになり、極楽橋の上に乗っていた「楼」を移築した、という考えを補強します。

 

05本殿の背面1.JPG
本殿の背面1
06本殿の背面2 唐破風がある.JPG
本殿の背面2 唐破風がある

 

 では、誰が何のためにこの建物をここに移築したのでしょうか?勿論豊臣秀頼です。しかし、当時の秀頼の背後にあり、実質的に豊臣家を差配していたのは「淀殿(茶々)」です。

 

  そして、移築を勧めたのは、此れも勿論、徳川家康です。家康としては、豊臣家に浪費させ、その財力を弱めたいという思惑と、秀吉の威光を示す構造物は抹殺したい、という思いがあります。しかし破却するには世間の目がある。それであれば、豊臣も、世間も納得できる形で秀吉の残影を消し去る。このために、家康と淀殿との交渉により、この移築が実現したのでしょう。

 

<続く>

 

 

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